株式会社AMMC|BPR・管理部門再構築シリーズ Vol.6
「業務が属人化しているので、マニュアルを作りたい」
管理部門の改善についてご相談を受ける中で、よく聞く言葉の一つです。
確かに、業務手順を文書として残すことは重要です。担当者が退職したときの引継ぎにも役立ちますし、新しく入社した社員への教育もしやすくなります。
しかし、マニュアルを作れば属人化が解消するわけではありません。
業務そのものに無駄や重複があり、判断基準が曖昧で、役割分担も整理されていない状態をそのまま文章にするとどうなるでしょうか。
「悪い業務を、悪い業務のまま標準化する」ことになってしまいます。
今回は、BPR・管理部門再構築シリーズ Vol.6として、マニュアル作成の前に行うべき業務の整理と、「人ではなく仕組みで回る会社」をつくるための考え方を解説します。
マニュアルがあるのに「その人しか分からない」会社
マニュアルが存在していても、実際には担当者へ聞かなければ仕事が進まない会社があります。
例えば、手順書には「請求内容を確認する」と書いてあるものの、何を確認するのか、どの状態なら承認してよいのか、例外が起きたときに誰へ相談するのかまでは書かれていない。
結果として、新しい担当者はマニュアルを読みながら、結局は前任者やベテラン社員へ質問することになります。
これは、作業手順だけが文書化され、判断基準や役割、業務全体の流れが整理されていない状態です。
属人化とは、単に「やり方が書いていないこと」ではありません。特定の人の経験、記憶、判断に業務が依存している状態そのものです。
「とりあえずマニュアルを作る」が危険な理由
1.不要な業務まで残してしまう
長年続いている業務の中には、「なぜやっているのか分からないけれど、昔からやっている」という作業が含まれていることがあります。
その状態でマニュアルを作ると、本来なくしてもよい業務まで正式な手順として残ります。
2.二重作業・重複チェックまで標準化してしまう
Excelへ入力した内容を別のExcelへ転記する。システムで確認できる数字を紙へ印刷して再確認する。同じ内容を複数の管理職が承認する。
こうした業務を見直さずにマニュアル化すると、非効率なプロセスそのものが「会社の正式なやり方」になります。
3.担当者独自の判断まで引き継いでしまう
「この取引先の場合はこうする」「この金額なら部長へ確認する」といった判断が、会社のルールではなく担当者の経験だけで行われていることがあります。
そのまま引き継ぐと、担当者が変わるたびに解釈が変わり、結局また属人化します。
4.マニュアルを作ること自体が目的になる
マニュアルのページ数や完成度にこだわりすぎると、「業務を誰でも回せるようにする」という本来の目的を見失うことがあります。
重要なのは立派なマニュアルを作ることではなく、担当者が変わっても一定の品質で業務を行える状態をつくることです。
BPRでは「マニュアル作成」は最後に近い
AMMCが考える業務再構築では、最初からマニュアル作成には入りません。
基本的には、次の順番で業務を整理します。
- ・STEP1 現在の業務を棚卸しする
- ・STEP2 不要・重複・非効率な業務をなくす
- ・STEP3 業務フローを統一する
- ・STEP4 判断基準を明確にする
- ・STEP5 役割・責任・承認権限を整理する
- ・STEP6 整理された業務をマニュアル化する
つまり、マニュアルは「現在の業務を記録するもの」ではなく、「再設計した業務を会社の仕組みとして残すもの」と考えます。
STEP1|まず業務を棚卸しする
最初に行うのは、誰がどのような業務を行っているのかを見える化することです。
日次・週次・月次・年次の定例業務だけでなく、イレギュラー対応、問い合わせ対応、担当者しか知らないExcel管理なども洗い出します。
ここで重要なのは、「あるべき業務」ではなく「実際に行っている業務」を把握することです。
業務を並べてみると、特定の社員に仕事が集中している、同じ情報を複数人が入力している、誰が責任者なのか分からない、といった問題が見えてきます。
STEP2|不要・重複・非効率な業務をなくす
次に、それぞれの業務について「そもそも必要か」を確認します。
BPRでは、現在の業務を少し速くする前に、その業務自体をなくせないかを考えます。
例えば、会議で誰も使っていない資料を毎月作成しているのであれば、Excel作成を自動化する前に資料そのものを廃止できないか検討します。
不要な仕事を効率化するより、不要な仕事をやめる方が効果は大きいからです。
STEP3|業務フローを統一する
同じ業務なのに担当者によってやり方が違う状態も、属人化の原因になります。
AさんはExcelで管理し、Bさんはシステムへ直接入力する。ある部門はメールで申請し、別の部門は紙で申請する。この状態では、担当者が増えるほど業務が複雑になります。
処理方法、申請方法、データの保存場所などを可能な範囲で統一し、「会社としての標準的な流れ」を決めます。
STEP4|判断基準を明確にする
属人化を解消するうえで、作業手順以上に重要なのが判断基準です。
「この場合はどうするのか」「どの金額から上長確認が必要か」「どの状態なら処理を進めてよいか」といった判断が担当者の頭の中だけにあると、マニュアルがあっても業務は止まります。
すべての例外を事前に決めることはできませんが、通常処理と例外処理の境界、相談先、承認が必要な条件などを整理しておくことで、担当者への依存を減らせます。
STEP5|役割・責任・承認権限を整理する
誰が作業するのかだけでなく、誰が確認し、誰が承認し、誰が最終的な責任を持つのかを明確にします。
例えば、経理担当者が支払データを作成することと、支払いそのものを決定することは別の役割です。
役割が曖昧だと、何でもベテラン社員や社長へ確認するようになり、そこが新たなボトルネックになります。
逆に、判断できる範囲と承認権限が明確であれば、社員は自分の役割の中で仕事を進めやすくなります。
STEP6|最後にマニュアルへ落とし込む
ここまで整理してから、初めてマニュアルを作ります。
マニュアルには、単なるクリック手順だけでなく、業務の目的、実施時期、担当者、確認者、使用するシステムやファイル、判断基準、例外時の相談先などを記載します。
画面操作が頻繁に変わるシステムであれば、細かいスクリーンショットを大量に並べるより、業務の目的や判断基準を中心にした方が更新しやすい場合もあります。
マニュアルは一度作って終わりではありません。業務が変われば更新し、実際に別の担当者が読んで業務を実行できるかを確認することも重要です。
マニュアルより先に「仕組み」をつくる
属人化対策というと、マニュアル作成、ダブルチェック、担当者の増員などが思い浮かびます。
しかし、本当に目指したいのは「担当者が変わっても業務が回る状態」です。
そのためには、業務を減らし、流れを揃え、判断基準と役割を明確にし、必要に応じてシステムや外部リソースも組み合わせます。
マニュアルは、その仕組みを支える一つの道具にすぎません。
標準化しすぎれば良いわけでもない
一方で、すべてを細かくルール化すればよいわけでもありません。
承認を増やしすぎたり、例外を認めないルールを作ったりすると、今度は業務のスピードが落ちます。社員が自分で判断できず、すべて上司へ確認する組織になる可能性もあります。
大切なのは、ミスや不正を防ぐために必要な統制と、現場が効率的に動ける自由度のバランスです。
この考え方は、今後取り上げる「中小企業と内部統制」にもつながります。内部統制も、会社をガチガチに縛ることが目的ではなく、会社が安全かつ継続的に業務を行うための仕組みとして考えることが重要です。
仕組み化は「優秀な社員を不要にすること」ではない
仕組み化というと、「誰でもできる仕事にする」「優秀な人に頼らない」と聞こえるかもしれません。
しかし、目的は優秀な社員の価値を下げることではありません。
むしろ、優秀な社員が単純作業や過去の経緯を知っているだけで重宝される状態から解放し、改善、分析、判断、人材育成など、本来その人だからこそできる仕事へ時間を使えるようにすることが目的です。
人に依存しない仕組みをつくることは、人を大切にしないことではなく、人の能力をより価値の高い仕事へ使うための土台づくりでもあります。
まとめ|「マニュアルを作る前」にやるべきことがある
マニュアルは、属人化対策として有効な手段です。しかし、現在の業務をそのまま書き残すだけでは、根本的な解決にはなりません。
- ・まず現在の業務を棚卸しする
- ・不要・重複・非効率な業務をなくす
- ・業務フローを統一する
- ・判断基準を明確にする
- ・役割・責任・承認権限を整理する
- ・最後に、整理された業務をマニュアル化する
悪い業務をそのままマニュアル化すれば、悪い業務が標準化されます。
マニュアルを作ることをゴールにするのではなく、「人が変わっても会社として業務が回る仕組み」をつくることをゴールにすることが重要です。
AMMCでは、財務・経理を中心とした業務棚卸し、業務プロセスの見直し、役割分担、標準化、マニュアル整備、システム・外部リソースの活用まで、管理部門の構築・再構築を一貫して支援しています。
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