株式会社AMMC|BPR・管理部門再構築シリーズ Vol.3
「月次試算表が出てくるのは翌々月」「決算が締まるころには、もう次の月が終わっている」。
このような状態になっていないでしょうか。
月次決算が遅いと、経営者が見ている数字は常に過去のものになります。売上が落ちている、粗利益率が悪化している、経費が増えている、資金繰りが厳しくなっている――こうした変化に気づくのが遅れれば、当然、経営判断も遅れます。
しかし、月次決算が遅い会社では、「経理担当者の能力が足りないから」と個人の問題として捉えられていることも少なくありません。実際には、担当者ではなく、業務プロセスや役割分担、ルール、システムの使い方に原因があるケースが多くあります。
今回は、BPR・管理部門再構築シリーズの第3回として、月次決算が遅い会社に共通しやすい5つの原因と、経理業務を見直す際のポイントを解説します。
そもそも、なぜ月次決算を早くする必要があるのか
月次決算は、単に「毎月の帳簿を締めるための経理作業」ではありません。経営者が会社の現在地を把握し、次の行動を決めるための経営管理の仕組みです。
例えば、8月の業績が分かるのが10月末だった場合、粗利益率の悪化や固定費の増加に気づいた時点では、すでに9月・10月の経営活動も進んでいます。対策を打てるタイミングが2か月近く遅れてしまいます。
一方、翌月の早い段階で月次決算が完了すれば、予算との差異を確認し、原因を分析し、必要な対策を次の経営活動へ反映できます。
つまり、月次決算の早期化は「経理を早く終わらせること」が目的ではありません。経営判断に使える数字を、経営判断に間に合うタイミングで提供することが目的です。
月次決算が遅い会社に共通する5つの原因
原因1.月末になってから資料を集め始めている
月次決算が遅れる会社で最初に確認したいのが、必要資料をいつ集めているかです。
請求書、経費精算、売上資料、在庫情報、勤怠データ、クレジットカード明細などが月末や翌月になってから経理へ集まり始めると、経理担当者がどれだけ頑張っても締め作業は早くなりません。
特に、「各部署から資料が来るまで経理は待つ」という運用になっている会社では、月次決算のスケジュールを経理部門だけでコントロールできなくなります。
必要なのは、経理担当者へ「もっと早く処理して」と求めることではなく、会社全体で締め日と提出期限を決めることです。
提出するのかを明確にし、月末を迎える前から準備できる業務は前倒ししていきます。月次決算の早期化は、経理部門だけではなく全社的な業務設計の問題です。
原因2.特定の担当者しか分からない業務が多い
前回のVol.2で取り上げた「経理の属人化」は、月次決算の遅延にも直結します。
例えば、減価償却はAさん、売上計上はBさん、原価計算はCさんしか分からない状態では、一人が休んだだけでも締め作業が止まります。さらに、「この取引はどう処理するのか」という判断基準まで個人の頭の中にあると、他の担当者が代替することもできません。
優秀な担当者がいる会社ほど、「あの人に聞けば分かる」という状態を放置してしまうことがあります。しかし、その状態は業務が効率化されているのではなく、会社の知識と判断が一人に集中している状態です。
月次決算を安定して早く締めるには、業務手順だけでなく、会計処理の判断基準、確認ポイント、必要資料まで組織として共有する必要があります。
原因3.月次決算の業務フローと締めスケジュールが決まっていない
「月次決算を早くしたい」と言いながら、そもそも月次決算の全体工程が整理されていない会社もあります。
入金確認、売上計上、仕入・経費計上、経費精算、給与・社会保険、固定資産、在庫、引当・未払計上、勘定科目の残高確認など、月次決算には複数の作業があります。これらの前後関係を整理しなければ、担当者は自分の業務だけを順番に処理することになります。
そこで重要になるのが、月次決算業務を一覧化し、締め日から逆算してスケジュールを設計することです。
- ・月末までに終わらせられる業務
- ・翌月1〜3営業日に行う業務
- ・他部署の資料を待つ業務
- ・最後に確認・承認する業務
このように工程を分けると、どこがボトルネックになっているのかが見えてきます。
「毎月なんとなく10日ごろに終わる」のではなく、「5営業日目までにここまで、7営業日目までにここまで」と工程ごとの期限を決めることが、早期化の第一歩です。
原因4.不要な確認・二重入力・紙業務が残っている
月次決算が遅い会社では、長年の運用の中で増えた業務がそのまま残っていることがあります。
例えば、システムへ入力した内容をExcelへ転記し、そのExcelを印刷して上司が確認し、さらに別の管理表へ入力する――といった運用です。
それぞれの作業には、始めた当時は理由があったのかもしれません。しかし、システムや組織が変わっても昔の手順だけが残り、「なぜこの作業をしているのか誰も説明できない」という状態になることがあります。
ここで重要なのは、単純に「システム化すれば早くなる」と考えないことです。不要な業務を残したままシステムへ置き換えても、非効率な業務がデジタル化されるだけです。
BPRでは、まず業務を棚卸しし、「この作業は本当に必要か」「同じ確認を複数回していないか」「別の資料で代替できないか」と問い直します。
月次決算を早くするためには、作業を速くする前に、やらなくてよい作業を減らすことが重要です。
原因5.経理部門だけで月次決算を完結させようとしている
月次決算は経理部門の仕事ですが、必要な情報のすべてを経理部門だけで作れるわけではありません。
売上の確定には営業部門、在庫には現場や物流部門、勤怠や給与には人事部門、設備投資には各部門の情報が必要になることがあります。
それにもかかわらず、各部署が「経理から聞かれたら答える」という受け身の状態では、毎月同じ確認作業が発生します。
経理担当者が各部署を追いかけ、資料を集め、内容を確認し、不明点を問い合わせる。これでは経理部門が会社全体の情報収集係になってしまいます。
月次決算を早期化するには、「経理が締める」のではなく、「会社全体で締める」という考え方が必要です。各部署が自分たちの提出期限と責任を理解し、経理へ必要な情報が自然に集まる仕組みをつくります。
月次決算の早期化は「人を増やす」前に業務を見直す
月次決算が遅れると、「経理の人数が足りないのではないか」と考えがちです。もちろん、業務量に対して明らかに人員が不足しているケースもあります。
しかし、人を増やす前に確認したいのが、現在の業務プロセスです。
不要な業務、二重入力、過剰な承認、紙による回覧、属人化した判断、他部署からの資料待ちが大量に残った状態で人を増やしても、非効率な業務を新しい担当者へ分配するだけになる可能性があります。
まず業務を整理し、それでも必要なリソースが不足しているのであれば、採用、配置転換、アウトソーシングなどを検討します。
この順番が重要です。
月次決算を早くするための5つのステップ
STEP1.月次決算業務をすべて棚卸しする
誰が、何を、いつ、どのシステム・資料を使って処理しているのかを一覧化します。担当者へのヒアリングだけでなく、実際の帳票やExcel、システム画面まで確認すると、隠れた作業が見つかりやすくなります。
STEP2.業務の前後関係とボトルネックを見える化する
各業務を単独で見るのではなく、どの作業が終わらないと次へ進めないのかを確認します。月次決算の最終日を遅らせている業務を特定することが重要です。
STEP3.不要な業務・重複業務をなくす
「昔からやっているから」という理由だけで続いている作業を見直します。帳票、Excel、承認、転記、チェックについて、本当に必要なのかを一つずつ確認します。
STEP4.ルールと締めスケジュールを標準化する
担当者ごとの判断を減らし、会計処理ルール、資料提出期限、チェック方法、承認者を明確にします。担当者が変わっても同じ流れで締められる状態を目指します。
STEP5.システム・外部リソースを活用する
業務を整理した後で、会計システム、経費精算、請求書、銀行連携などのシステム活用や、定型業務のアウトソーシングを検討します。
システムや外部リソースは、非効率な業務をそのまま置き換えるためではなく、整理された業務をより効率的に運用するために使うことが重要です。
「翌月10営業日以内」は一つの目安。大切なのは経営判断に間に合うこと
月次決算の早期化というと、「何営業日以内に締めるべきか」という話になりがちです。
AMMCでは、中小企業がまず目指す一つの目安として「翌月10営業日以内」を考えています。ただし、適切な締め日は企業規模、業種、取引量、在庫や原価計算の有無、グループ会社との連携などによって異なります。
重要なのは、単純に1日でも早く締めることではありません。
例えば、数字の精度を大きく落として3営業日で締めても、経営判断に使えなければ意味がありません。一方、必要な精度を保ちながら7〜10営業日で安定して締め、その数字を経営会議や予算管理に活用できるのであれば、十分に価値があります。
月次決算の目的は「経理部が早く仕事を終えること」ではなく、「経営者が必要なタイミングで、必要な数字を使えること」です。
月次決算が早くなると、経理部門の役割も変わる
月次決算に毎月20日、25日とかかっていると、経理担当者は締め作業が終わったころには次の月次決算の準備に追われます。これでは、数字を分析したり、改善策を考えたりする時間がありません。
月次決算を早期化すると、経理部門は単に数字を作るだけでなく、予算との差異分析、部門別採算の確認、資金繰りの予測、経営者への情報提供など、より経営に近い仕事へ時間を使えるようになります。
つまり、月次決算の早期化は単なる効率化ではなく、経理部門を「処理する部門」から「経営を支える部門」へ変えていくための土台でもあります。
まとめ|月次決算の遅れは「人」ではなく「仕組み」を見る
月次決算が遅いとき、担当者へ「もっと早く締めてほしい」と伝えるだけでは、根本的な解決にならないことがあります。
確認したいのは、次の5つです。
- ・必要資料が経理へ集まるタイミング
- ・特定の担当者への業務・判断の集中
- ・月次決算全体の業務フローと締めスケジュール
- ・不要な確認・二重入力・紙業務
- ・経理部門と他部署の役割分担
月次決算の遅れは、経理担当者個人の問題ではなく、会社の業務設計の問題として捉えることが重要です。
業務を棚卸しし、不要な作業をなくし、判断基準と役割を標準化したうえで、システムや外部リソースを活用する。こうした業務プロセス全体の見直しが、BPRの考え方です。
AMMCでは、経理業務の棚卸し、月次決算プロセスの見直し、属人化の解消、システム・外部リソースの活用などを通じて、管理部門の構築・再構築を支援しています。
「月次決算を早くしたいが、どこから見直せばよいか分からない」「経理担当者を増やす前に、今の業務を整理したい」といった課題がありましたら、お気軽にご相談ください。
関連記事