株式会社AMMC|BPR・管理部門再構築シリーズ Vol.1

はじめに:業務改善をしているのに、なぜ会社は変わらないのか


「業務を効率化したい」「経理の属人化をなくしたい」「月次決算を早くしたい」。

こうした課題を抱える中小企業は少なくありません。そこで、マニュアルを作成したり、新しいシステムを導入したり、Excelを整理したりと、さまざまな業務改善に取り組みます。

ところが、しばらくすると以前と同じ状態に戻ってしまうことがあります。

担当者が変われば仕事が止まり、新しいシステムを入れたのに二重入力が残り、会議では「その件は○○さんしか分かりません」という言葉が繰り返されます。

なぜ、改善活動を続けているのに会社は変わらないのでしょうか。

その理由の一つは、「目の前の作業を改善すること」と「業務そのものを再設計すること」が混同されているからです。

個別作業の効率化はもちろん大切です。

しかし、そもそもの業務目的、役割分担、承認ルール、情報の流れまで見直さなければ、根本的な問題は残ります。そこで重要になる考え方がBPRです。

 

本記事では、BPRとは何か、一般的な業務改善と何が違うのか、中小企業ではどのように進めればよいのかを、特に経理・管理部門の視点から解説します。BPRという言葉を知らなくても問題ありません。

「会社が大きくなってきたのに、管理部門の仕事のやり方が昔のまま」「特定の人がいないと回らない」と感じている経営者にこそ知っていただきたい考え方です。

BPRとは?業務を部分的に直すのではなく、仕組みから再設計する


BPRは「Business Process Re-engineering(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」の略称です。

直訳すると、業務プロセスを根本から再設計するという意味になります。単に作業時間を10分短縮する、紙をPDFにする、Excelをクラウド化するといった改善だけではありません。

「この業務は何のために存在するのか」「誰が担当すべきなのか」「そもそもこの承認は必要なのか」と、業務の前提から問い直します。

例えば、請求書処理に時間がかかっている会社を考えてみます。通常の業務改善であれば、請求書をスキャンする、Excelの入力項目を減らす、会計システムへの取込み機能を利用するといった方法が考えられます。

もちろん、それだけでも一定の効果はあります。一方、BPRでは、請求書を受け取ってから会計計上・承認・支払いまでの一連の流れを確認します。誰が何を確認しているのか、同じ情報を何回入力しているのか、承認者は本当にその内容を確認できているのかまで検証します。

その結果、「現場で一度入力した内容を経理がもう一度入力している」「承認のためだけに紙を印刷している」「責任者が形式的に印鑑を押している」といった問題が見えてきます。

BPRの目的は、こうしたムダを個別に潰すことではなく、業務全体を一つのプロセスとして捉え、会社にとって最適な形へ組み直すことです。

業務改善とBPRの違い


業務改善とBPRは対立するものではありません。違いは「どの範囲まで変えるか」です。業務改善は、現在の業務を前提として、より早く、正確に、負担を少なくすることを目指します。

これに対してBPRは、現在の業務の前提自体を疑います。つまり、「どうすればこの作業を早くできるか」だけでなく、「この作業は本当に必要なのか」まで考えるのです。

例えば月次決算が20営業日かかっている会社で、仕訳入力のスピードだけを上げても、他部署から資料が届くのが15営業日目なら月次決算は大きく早まりません。経理担当者だけに「もっと早く締めてください」と求めても限界があります。必要なのは、営業部門や購買部門から経理へ情報が届くタイミング、締め日、承認方法、未着資料の扱いなど、会社全体のプロセスを見直すことです。

BPRでは、経理部門だけの問題に見えるものを「会社全体の情報設計の問題」として捉え直します。この視点が、中小企業の管理部門を再構築するときに非常に重要です。

中小企業でBPRが必要になる5つのサイン


BPRは大企業だけのものではありません。むしろ、創業時のやり方を引き継いだまま売上や社員数が増えてきた中小企業ほど必要になるケースがあります。特に注意したいのが、次のような状態です。

第一は、特定の担当者しか業務内容を理解していない状態です。「○○さんが休むと分からない」「そのExcelは○○さんが作っています」という状態は、典型的な属人化です。本人が優秀であるほど仕事が集中し、周囲が覚える機会を失うこともあります。属人化は担当者個人の問題ではなく、組織設計の問題として考える必要があります。

第二は、月次決算や管理資料の作成が遅い状態です。前月の数字が分かる頃には翌月も終わりかけているのでは、経営判断に使える情報とは言いにくくなります。月次が遅い会社では、経理の能力だけでなく、資料回収、締めルール、システム連携、役割分担など複数の原因が絡んでいることが多くあります。

第三は、同じ情報を何度も入力している状態です。販売管理システムからExcelへ転記し、そのExcelを見ながら会計システムへ入力する。さらに管理資料を作るため別のExcelへ転記する。このような二重・三重入力は、時間を奪うだけでなく入力ミスの原因にもなります。

第四は、会社が成長したのに管理部門の体制が変わっていない状態です。社員10人の会社と100人の会社では、必要なルールも管理方法も異なります。しかし実際には、売上や社員数だけが増え、管理部門は創業時とほぼ同じ運用という会社があります。成長に管理機能が追いつかないと、現場の負担やミスが急増します。

第五は、退職や異動のたびに大規模な引継ぎが発生する状態です。引継ぎそのものは必要ですが、毎回ゼロから説明しなければ業務が回らないのであれば、仕組みとして改善余地があります。重要なのは「引継ぎを上手にすること」だけではなく、「引継ぎへの依存度を下げること」です。

なぜマニュアルを作るだけでは属人化がなくならないのか


属人化対策として最初に挙がりやすいのがマニュアル作成です。マニュアルは必要です。しかし、マニュアルさえ作れば属人化がなくなるわけではありません。なぜなら、属人化の原因が「手順を書いていないこと」だけとは限らないからです。

例えば、一人の担当者が請求、入金消込、支払い、会計入力、月次資料作成まで担当している場合、詳細なマニュアルを作っても、その人に業務が集中する構造は変わりません。また、「例外が起きたら部長に確認する」と書いてあっても、判断基準が部長の頭の中にしかなければ、判断そのものは属人化したままです。

本当に必要なのは、業務手順だけでなく、担当範囲、責任、判断基準、確認方法、必要な情報まで整理することです。マニュアルはBPRの成果物の一つであって、BPRそのものではありません。

システムを導入するだけではBPRにならない


DXやクラウド化が進み、「新しいシステムを入れれば業務が改善する」と考えるケースもあります。しかし、現状の非効率な業務をそのままシステムに載せると、非効率がデジタル化されるだけになることがあります。

例えば、紙の申請書をそのままワークフローシステムに置き換えても、承認者が多すぎる、確認項目が重複している、承認責任が曖昧といった問題は解決しません。会計システムを変更しても、前工程の情報が整っていなければ経理担当者による修正作業は残ります。

そのため、システム選定より先に「あるべき業務」を設計することが重要です。業務を整理したうえで、そのプロセスに合うシステムを選ぶ。この順番を逆にしないことが、BPRを成功させる重要なポイントです。

経理・管理部門のBPRはどこから始めるのか


中小企業でBPRを進める場合、最初から会社全体を変えようとするとプロジェクトが大きくなりすぎます。まずは課題が顕在化している経理・管理部門から始める方法が現実的です。

第一段階は「業務の棚卸し」です。誰が、何を、いつ、どのくらいの時間をかけて行っているのかを一覧化します。ここでは理想の業務ではなく、実際に行われている業務を把握することが重要です。担当者へのヒアリングだけでなく、実際の帳票、Excel、システム、メールなども確認します。

第二段階は「問題の分類」です。不要な業務、重複業務、属人化している業務、手作業が多い業務、判断基準が曖昧な業務などに分けます。単に時間がかかっている業務を探すのではなく、なぜその作業が発生しているのかまで掘り下げます。

第三段階は「あるべき業務フローの設計」です。誰が担当するか、どの時点で情報を確定するか、どこまでシステム化するか、どこを外注できるかを設計します。重要なのは、現在の担当者を前提にしすぎないことです。「○○さんだからできる」ではなく、組織として継続できる形を考えます。

第四段階は「標準化」です。新しい業務フローに基づき、ルール、マニュアル、チェックリスト、締めスケジュールなどを整えます。この段階で初めて、担当者が変わっても一定品質で業務を遂行できる状態に近づきます。

第五段階が「システム化・自動化・外注化」です。標準化した業務の中から、機械に任せられる部分、外部へ任せられる部分、人が判断すべき部分を分けます。すべてを自社社員が行う必要はありません。一方、経営判断に関わる重要な業務まで外部に丸投げすることも適切ではありません。会社ごとに最適な組み合わせを設計する必要があります。

BPRで重要なのは「人を減らすこと」ではなく「人にしかできない仕事へ移すこと」


BPRという言葉から、人員削減を連想する方もいるかもしれません。しかし、中小企業の管理部門では、単純に人を減らすことを目的にするべきではありません。むしろ、人手不足の時代だからこそ、限られた人材を価値の高い仕事へ移すことが重要です。

例えば経理担当者が一日の大半を転記や資料回収に使っているのであれば、その時間を債権管理、予実分析、業務改善、経営資料の作成などへ振り向けられます。経理を「処理をする部署」から「経営を支える部署」へ変えることも、BPRが目指す姿の一つです。

その意味では、BPRとCFO機能はつながっています。経営判断に必要な数字を早く正確に出すには、その前段階である経理・管理部門の業務が整っていなければなりません。財務戦略だけを高度化しても、基礎となる数字が遅い、あるいは信頼できない状態では十分に機能しないのです。

BPRが失敗しやすい会社の共通点


BPRは、正しい手順で進めれば大きな効果が期待できます。一方で、失敗しやすいパターンもあります。代表的なのは「現場に目的を説明せず、経営者やコンサルタントだけで進める」ケースです。現場から見れば、長年行ってきた仕事を突然否定されたように感じることがあります。何のために変えるのかを共有しなければ、抵抗が生まれるのは自然です。

また、現在の担当者の意見をそのまま正解にすることにも注意が必要です。現場の知識は非常に重要ですが、長年その業務を行っているからこそ「このやり方が当たり前」と思い込んでいる可能性もあります。現場の声を尊重しながら、第三者の視点で目的から問い直す必要があります。

さらに、改善案を作っただけで終わるプロジェクトも少なくありません。新しい業務フローは、実際に運用して初めて問題が見えてきます。BPRでは、設計、導入、運用、修正までを一連のプロセスとして考えることが重要です。

経営者がBPRで見るべきポイント


BPRを成功させるために、経営者が細かな作業手順まですべて理解する必要はありません。しかし、少なくとも「何を変えるためのプロジェクトなのか」は明確にする必要があります。単に残業時間を減らしたいのか、月次決算を早めたいのか、退職リスクを下げたいのか、会社の成長に耐えられる管理部門を作りたいのかによって、設計は変わります。

また、改善効果を数字で確認することも大切です。月次決算日数、作業時間、手入力件数、差戻し件数、特定担当者しかできない業務数など、改善前後を比較できる指標を設定します。BPRは「何となく仕事が楽になった」で終わらせず、会社の経営基盤がどの程度強くなったのかを確認する必要があります。

そして最も重要なのは、BPRを「経理部だけのプロジェクト」にしないことです。経理に届く数字や資料の多くは営業、購買、人事、現場など他部署で発生します。経理を改善するということは、会社の情報の流れを改善することでもあります。経営者が部門間の調整を後押しすることで、BPRは進めやすくなります。

AMMCが考えるBPR – 「管理部門の再構築」という考え方


AMMCでは、BPRを単なるコスト削減や業務効率化として捉えていません。特に中小・中堅企業では、「管理部門をこれからの会社規模に合わせて再構築すること」が重要だと考えています。

会社が成長すると、必要な管理レベルも変化します。創業期には社長と経理担当者一人で十分だった会社でも、売上が5億円、10億円、さらにその先へ伸びれば、部門別の数字、予算管理、資金繰り、権限設計、内部統制などが必要になります。ところが、管理部門は売上を直接生む部門ではないため、体制整備が後回しになりがちです。

結果として、会社の規模と管理部門の能力にギャップが生まれます。そのギャップが、月次決算の遅れ、属人化、ミス、経営数字への不信、担当者の疲弊などとして表面化します。AMMCが考えるBPRは、このギャップを埋め、経営者が安心して事業成長に集中できる管理基盤をつくることです。

業務を棚卸しし、不要な作業をなくし、役割を整理し、標準化し、必要に応じてシステムや外部リソースを活用する。そして、経営判断に必要な数字が適切なタイミングで経営者へ届く状態をつくる。この一連の取り組みを「管理部門の再構築」として支援していきます。

まとめ:業務改善の先に「成長に耐えられる仕組み」をつくる


BPRとは、今ある作業を少し便利にすることではありません。会社の目的に合わせて、業務プロセスそのものを見直し、組織として継続できる形へ再設計する取り組みです。

特に中小企業では、会社の成長スピードに管理部門が追いつかないことがあります。担当者の努力で何とか回っているうちは問題が見えにくいものの、退職、急成長、拠点増加、事業拡大などをきっかけに一気に課題が表面化します。問題が起きてから慌てて引継ぎをするのではなく、平時から「誰か一人に依存しない仕組み」をつくることが重要です。

業務改善は必要です。しかし、改善を繰り返しても根本的な問題が解決しない場合は、一度「そもそも、この業務はどうあるべきか」という視点に戻ってみてください。そこからBPRが始まります。

株式会社AMMCでは、経理・財務の実務経験を基盤に、業務の棚卸しから標準化、役割分担、システム・外注の活用、管理部門の再構築まで支援しています。「経理が特定の担当者に依存している」「月次決算が遅い」「会社が大きくなり、今の管理体制に限界を感じている」といった課題がございましたら、お気軽にご相談ください。

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