突然ですが、皆様は戦士になりたいですか?魔法使いですか?はたまた僧侶がいいですか?
国民的RPG「ドラゴンクエスト」シリーズには、作品によってさまざまな職業が登場します。前線で敵と戦う戦士、強力な呪文を操る魔法使い、仲間を回復する僧侶。それぞれに得意分野があり、それぞれに役割があります。
どの職業を選ぶか。どの仲間とパーティーを組むか。そんなことを考えているだけでも楽しいのが、ドラゴンクエストの魅力の一つではないでしょうか。
さて、今回はそんなドラゴンクエストから、会社のマネジメントについて考えてみたいと思います。
強いけれど、自分も傷つく「もろはのつるぎ」
ドラゴンクエストシリーズには、「もろはのつるぎ」という武器が登場します。作品によって細かな仕様や名称は異なりますが、強力な一方で、使う側にも不利益が生じることがあるという、まさに「諸刃の剣」を体現したような武器です。
また、シリーズには「もろば斬り」という、自分もダメージを受ける代わりに強力な攻撃を行う特技も登場します。
大きな力を発揮できる。しかし、その力に頼りすぎれば、自分自身も傷ついてしまう。
実は会社にも、これと少し似た存在があります。
それが、「非常に優秀な社員」です。
優秀な社員ほど、仕事が集まる
誤解のないように申し上げると、優秀な社員がいること自体は、会社にとって大きな財産です。
仕事が速い。判断が正確。経験も豊富。難しい案件を任せても対応してくれる。トラブルが発生しても、その人に相談すれば解決してくれる。
経営者や上司からすれば、これほど頼もしい存在はありません。
ところが、優秀だからこそ起こる問題があります。
「この仕事は○○さんに任せよう」
「分からなければ○○さんに聞けばいい」
「重要な取引先は○○さんに任せておけば安心だ」
こうして、仕事だけではなく、判断、情報、ノウハウ、取引先との関係まで、一人の社員へ少しずつ集中していきます。
本人が優秀であるほど、その状態でも仕事は回ってしまいます。そのため、会社側も問題に気づきにくいのです。
「できる人に任せる」がリスクに変わる瞬間
問題は、「優秀な人に仕事を任せること」ではありません。
問題なのは、「その人がいなければ仕事が回らない状態」になってしまうことです。
例えば経理部門であれば、月次決算の進め方を一人しか理解していない、特殊な仕訳の判断基準を一人しか知らない、支払業務や銀行対応の手順がその人の頭の中にしかない、といった状態です。
日常業務では表面化しなくても、担当者が休職したり、異動したり、退職したりした瞬間に問題が表面化します。
さらに怖いのは、その社員が在籍している間にも、会社の成長を止めるボトルネックになる可能性があることです。
重要な判断をすべて一人が行っていれば、その人が処理できる量が組織全体の処理能力の上限になります。会社が成長して仕事が増えても、その人の時間は1日24時間しかありません。
「あの人がいないと回らない」は、褒め言葉のように聞こえます。しかし、組織設計という視点では、注意が必要なサインでもあります。
本人にとっても「もろはのつるぎ」になる
属人化は、会社だけの問題ではありません。仕事を集中させられた本人にも負担が返ってきます。
仕事ができるから、新しい仕事を任される。トラブルが起きれば呼ばれる。後輩から質問される。休んでいても連絡が来る。
結果として、優秀な社員ほど忙しくなり、本来取り組むべき改善やマネジメント、新しい仕事に時間を使えなくなります。
会社としては「頼りになるから任せている」つもりでも、本人から見れば「いつまでも自分しかできない仕事から抜けられない」という状態になりかねません。
そして、その状態が長く続けば、疲弊やモチベーション低下、最悪の場合には退職につながる可能性もあります。
会社に大きな成果をもたらしてくれる一方で、頼り方を間違えると会社にも本人にも負荷が返ってくる。まさに「もろはのつるぎ」です。
優秀な社員の能力を「組織の能力」に変える
では、どうすればよいのでしょうか。
優秀な社員から仕事を取り上げる必要はありません。むしろ、その人が持っている知識や判断基準を、組織全体の財産へ変えていくことが重要です。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
・業務を棚卸しし、誰が何を担当しているのかを可視化する
・本人しか知らない判断基準や例外処理を言語化する
・業務フローや手順を標準化する
・複数人が同じ業務を理解できる状態をつくる
・システムや外部リソースを活用し、単純作業を減らす
・優秀な社員を実務処理から改善・育成・マネジメントへ移していく
ポイントは、単にマニュアルを作ることではありません。
「誰が担当しても一定の品質で業務が進む仕組み」をつくり、そのうえで高度な判断が必要な仕事に優秀な社員の力を使うことです。
一人の100点に依存するより、組織として80点、90点の仕事を安定して再現できる仕組みをつくる。そして、平均点を高めていく。その方が、会社は成長しやすくなります。
「その人がいなくても回る会社」は、その人を軽視する会社ではない
「誰かがいなくても回る仕組みをつくる」と聞くと、社員を代替可能な存在として扱うように感じるかもしれません。
しかし、私は逆だと考えています。
優秀な社員に定型業務や過去から続く仕事を抱え込ませるのではなく、その人にしかできない、より付加価値の高い仕事へ時間を使ってもらうために仕組みを整えるのです。
業務改善、新しい仕組みづくり、部下の育成、経営への提案など、優秀な社員だからこそ任せたい仕事はたくさんあります。
属人化を解消することは、「その人が不要になること」ではありません。
その人の能力を、個人の中だけに留めず、会社全体へ広げていくことなのです。
強い会社は、一人の勇者だけではつくられない
ドラゴンクエストでは、強力な武器や特技は冒険を大きく助けてくれます。しかし、状況に応じて仲間や役割、装備、戦い方を考えることも大切です。
会社経営も同じではないでしょうか。
圧倒的に仕事のできる社員が一人いることは、大きな強みです。しかし、その一人に会社の仕事や判断が集中してしまえば、強みだったはずの存在が組織のボトルネックになることがあります。
大切なのは、優秀な社員に頼らないことではありません。
優秀な社員の力を、組織全体の力へ変えていくことです。
もし社内で「あの人がいないと分からない」「この仕事は○○さんしかできない」という言葉が頻繁に聞こえてくるのであれば、一度、業務の仕組みを見直してみてもよいかもしれません。
その社員は、会社にとって頼もしい「最強装備」であると同時に、使い方によっては「もろはのつるぎ」になっているかもしれません。
AMMCでは管理部門の属人化解消・再構築をご支援しています
株式会社AMMCでは、経理をはじめとする管理部門の業務棚卸し、業務フローの見直し、標準化、役割分担、システム・外部リソースの活用などを通じて、特定の担当者に依存しない管理部門づくりをご支援しています。
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※本記事は「ドラゴンクエスト」シリーズを題材に、組織づくり・マネジメントについて考察したAMMCの経営コラムです。ゲーム作品・商品等の権利は各権利者に帰属します。
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