株式会社AMMC|BPR・管理部門再構築シリーズ Vol.9
売上が増え、社員が増え、拠点も増えた。それなのに、管理部門の体制は創業当時からほとんど変わっていない。中小企業では、このような状態が決して珍しくありません。
経理担当者は日々の請求や支払に追われ、人事・労務の判断は社長に集中し、月次の数字は経営会議に間に合わない。「そろそろ管理部長が必要なのでは」と考える経営者もいるでしょう。
ただし、管理部長という役職を新設すれば問題が解決するとは限りません。重要なのは、財務・経理、人事・労務、総務などを横断して、誰が業務を管理し、誰が判断し、誰が改善を進めるのかを明確にすることです。今回は年商5億〜50億円程度の企業を念頭に、成長段階に応じた管理部門の設計を考えます。
管理部長がいない会社で起きやすい5つの問題
① 実務と判断が特定の担当者に集中する
経験豊富な担当者が、請求・支払・給与関連の調整から例外処理まで抱え込みます。担当者が不在になると、仕事の進め方だけでなく判断の根拠まで分からなくなります。
② 月次決算が遅れ、経営判断に数字を使えない
日常処理を終えることが優先され、締め日程や部門別の数字を改善する担当が不在になります。経営者が業績を把握する頃には、対応が後手に回ることがあります。
③ 社長に承認・調整が集中する
採用、支払、契約、経費精算などの判断がすべて社長に集まると、意思決定が遅くなるだけでなく、社長が本来注力すべき営業や事業戦略の時間も削られます。
④ 部門間の課題が放置される
経理の請求漏れが営業の情報連携に起因していても、部門をまたいで業務を見直す人がいなければ、対症療法を繰り返してしまいます。
⑤ 管理部門の改善と人材育成が進まない
担当者が目の前の処理に追われ、マニュアル整備、システムの見直し、後任育成などが後回しになります。
これらに共通するのは、「管理部長がいないこと」そのものよりも、管理部門を統括する機能が不足していることです。
管理部門に必要なのは3つの役割
管理部門の組織を考える際は、まず役職名ではなく、必要な機能を3つに分けると整理しやすくなります。

3つの機能は必要ですが、必ずしも3人の社員や3つの部署を設ける必要はありません。小規模な会社では兼務が自然ですし、専門的な部分は外部人材を活用する方法もあります。一方で、兼務している場合でも「誰が最終的に確認・承認するか」は曖昧にしないことが大切です。
年商5億・10億・30億・50億で管理部門はどう変わる?
会社の成長に伴い、取引件数、社員数、拠点数、承認事項が増えていきます。必要な管理機能も、会社のステージによって変わります。

※上記は組織設計を考えるためのモデルであり、年商による一律の基準ではありません。同じ10億円企業でも、従業員10人の卸売業と従業員100人の製造業では、管理部門に必要な機能や人数が大きく異なります。
重要なのは、売上だけで判断しないことです。従業員数、取引件数、事業所数、雇用形態、システムの整備状況なども踏まえ、現在の業務負荷と将来の成長を見据えて体制を見直します。
管理部長を採用する? 社内で育成する? 外部を活用する?
管理部門を統括する機能が不足しているとき、選択肢は大きく3つあります。どれか一つが常に正解というわけではありません。
| 選択肢 |
メリット |
注意点 |
| 管理部長を採用する |
社内に常駐し、継続的に統括できる |
採用難、固定費、適性の見極め |
| 既存社員を育成・登用する |
業務・社風への理解を活かせる |
育成期間、実務との兼務負担 |
| 外部の専門人材を活用する |
必要な経験・専門性を補える |
社内責任者との分担、情報共有が必要 |
管理部長は、財務・経理、人事・労務、総務のすべてに精通したスペシャリストである必要はありません。各分野の担当者や専門家の力を活かし、部門間の優先順位を調整し、会社全体の視点から判断できることが重要です。もちろん、特定分野に深い専門性を持つ管理職も活躍できます。
また、社外CFOは管理部長の完全な代替とは限りません。例えば社外CFOが資金管理や経営管理、管理部門の設計を支援し、社内の責任者が日常の承認や人員管理を担うなど、役割を組み合わせる方法があります。
管理部門は「人」ではなく「役割」から設計する
管理部長を採用してから仕事を考えるのではなく、必要な機能を整理してから、その機能を誰が担うか決める。これが管理部門再構築の基本です。

実際の設計では、まず業務一覧を作り、「作成」「確認」「承認」「実行」「改善」の担当を整理します。次に、社内で持つべき判断と外部に任せられる実務を区分し、承認権限やシステム権限を整えます。
特に支払や人事情報などの重要業務では、少人数だからといって一人にすべてを任せず、経営者のレビューやシステム上の権限制限など、実態に合った確認の仕組みを設けます。これは前回のVol.8で扱った内部統制の考え方ともつながります。
管理部門を再構築するときに避けたい3つの失敗
失敗① 優秀な担当者を準備なく管理職にする
正確に実務をこなす力と、業務を設計し、人を育て、他部署と調整する力は同じではありません。登用するなら、権限や期待役割を明確にし、必要な育成や支援を用意することが大切です。
失敗② 管理部長を採用すれば解決すると考える
業務フローや承認権限が曖昧なままでは、新しい管理部長も判断に迷います。人材採用と並行して、業務の棚卸しや課題整理を進める必要があります。
失敗③ システム導入だけで立て直そうとする
会計・勤怠・経費精算などのシステムは有効な手段ですが、誰が入力し、確認し、承認するかが決まっていなければ混乱が残ります。システム導入前に業務と役割を設計することが重要です。

まとめ|管理部長がいなくても、強い管理部門はつくれる
管理部長がいないこと自体が、会社の弱点なのではありません。問題は、管理部門に必要な役割が整理されず、誰が何を判断し、どこに責任を持つのかが曖昧になっていることです。
会社が成長すれば、管理部門に求められる役割も変わります。実務を正確に回す人、業務を管理・改善する人、経営判断を支える人。それぞれの機能を、会社の規模や課題に応じて組み合わせることが大切です。
役職を埋めることよりも、会社を支える機能を整えること。それが、管理部門再構築の第一歩です。
管理部門の仕組みづくりでお困りの経営者の方へ
株式会社AMMCでは、財務・経理の実務経験に加え、人事・労務、生産管理などの経験も踏まえ、管理部門の業務棚卸し、役割分担、承認フロー、月次管理、システム活用などを組み合わせた構築・再構築支援を行っています。
管理部長の採用を検討する前の現状整理から、お気軽にご相談ください。
※本記事の年商別の体制例は一般的な考え方を示すものであり、個別企業の適切な人員数や法的義務を断定するものではありません。
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