株式会社AMMC|ドラゴンクエストに学ぶ経営
突然ですが、皆様はドラゴンクエストで「さくせん」を使い分けていますか?
敵を一気に倒したいときは「ガンガンいこうぜ」。回復を優先したいときは「いのちだいじに」。そして、自分で仲間の行動を細かく決めたいときは「めいれいさせろ」。
作品によって名称や仕様は異なりますが、状況に応じて仲間の行動方針を切り替える「さくせん」は、ドラゴンクエストを象徴する仕組みの一つです。
実は、会社経営にもこれとよく似た場面があります。
売上を伸ばすのか。利益を守るのか。投資するのか。資金を温存するのか。社長が細かく指示するのか。現場へ判断を任せるのか。
会社も、いつも同じ「さくせん」で動かせばよいわけではありません。今回は、ドラゴンクエストの「さくせん」から、経営方針・権限移譲・マネジメントについて考えてみます。
会社にも「さくせん」が必要です
経営者の重要な仕事の一つは、会社がどこへ向かうのか、今は何を優先するのかを決めることです。
例えば、成長期であれば新規顧客の獲得や採用、設備投資を優先することがあります。一方、資金繰りが厳しい局面では、投資を抑え、利益やキャッシュの確保を優先する必要があります。
どちらが正しいという話ではありません。会社の置かれた状況によって、正しい「さくせん」は変わります。
問題なのは、経営方針が曖昧なまま、現場に「もっと頑張ってほしい」とだけ伝えてしまうことです。
ゲームで作戦を設定せず、仲間それぞれに好きな行動をしてもらうようなものです。会社として何を優先するのかが分からなければ、社員が一生懸命働いていても、組織全体では違う方向へ進んでしまうことがあります。
「ガンガンいこうぜ!」が必要なとき

会社を成長させるためには、攻める局面が必要です。
営業を強化する。新しい市場へ進出する。人材を採用する。設備やシステムへ投資する。新商品や新サービスを開発する。
経営資源を積極的に使い、成長を取りにいく。まさに「ガンガンいこうぜ!」です。
特に成長企業では、経営者自身が強い推進力を持って会社を引っ張ることが大きな強みになります。
しかし、ここで注意したいのは、会社全体がいつまでも「ガンガンいこうぜ!」のままでよいとは限らないことです。
攻め続けると、後ろが追いつかなくなる
売上が増えれば、請求や入金、支払い、採用、労務、契約、システム、資金管理など、会社を支える仕事も増えていきます。
営業部門はどんどん前へ進んでいるのに、経理や管理部門は以前の人数・以前の仕組みのまま。そんな状態になると、月次決算が遅れる、担当者へ業務が集中する、承認が社長に集中する、資金繰りが見えにくくなる、といった問題が起こります。
攻撃力だけを上げても、回復や防御が追いつかなければ長い戦いには耐えられません。
会社も同じです。成長を止める必要はありませんが、成長を支えられる管理体制も同時につくる必要があります。
ときには「いのちだいじに」も必要

会社経営では、常に売上拡大を最優先にすることが正解とは限りません。
資金繰りが厳しくなっているとき、社員の負荷が高まりすぎているとき、急激な成長に管理体制が追いついていないときには、一度守りを固めることも重要です。
投資の時期を見直す。採算の悪い仕事を整理する。手元資金を厚くする。業務プロセスを見直す。管理部門を整える。
これは「守りに入って成長を諦める」ということではありません。次に攻めるための体力を回復させる時間です。
経営者には、「今は攻めるときなのか、それとも守りを固めるときなのか」を判断する役割があります。
「めいれいさせろ」は悪い作戦なのか?
マネジメントの視点で面白いのが「めいれいさせろ」です。
会社に置き換えるなら、社長や上司が「誰が、何を、いつ、どのようにやるか」まで細かく指示する状態に近いでしょう。
これは必ずしも悪いマネジメントではありません。
創業直後で社員がまだ業務を理解していないとき、重大なトラブルが発生したとき、緊急性の高い判断が必要なときなどは、経営者や管理職が細かく指示した方が早く、正確な場合があります。
問題は、会社が成長しても、ずっと「めいれいさせろ」のままになっていることです。
社長がすべて判断する会社には限界がある
会社が小さいうちは、社長がほぼすべてを把握し、判断することもできます。
しかし、社員が増え、取引先が増え、事業が広がっても同じやり方を続ければ、やがて社長自身が会社のボトルネックになります。
- 「社長、これはどうしますか?」
- 「この金額は承認していいですか?」
- 「このお客様にはどう対応しますか?」
すべての判断が社長へ集まれば、社員が増えても会社の意思決定能力は社長一人分のままです。
しかも、社長は本来考えるべき経営戦略、新規事業、投資、人材、資金調達などに使う時間を、日常業務の判断に奪われてしまいます。
権限移譲は「好きにやっていい」ではない
そこで必要になるのが権限移譲です。
ただし、権限移譲とは「後は好きにやってください」と丸投げすることではありません。
経営者が示すべきなのは、会社としての目的、優先順位、守るべきルール、そしてどこまで現場で判断してよいかという範囲です。
例えば、「一定金額までは部長判断」「この条件を満たせば現場で対応」「例外の場合だけ社長へ相談」といった形で、判断できる範囲を明確にします。
経営者が一つひとつの行動を決めるのではなく、「作戦」と「判断のルール」を決め、その中で社員が考えて動ける状態をつくる。これが、会社が大きくなるために必要なマネジメントの一つだと思います。
「自分で考えろ」だけでも会社は回らない
一方で、権限移譲をしたからといって、いきなり全員が自分で適切に判断できるわけではありません。
先日の代表ブログでも書きましたが、最初から裁量を与えた方が伸びる人もいれば、最初は手順や判断基準を丁寧に伝え、少しずつ任せる範囲を広げた方が力を発揮する人もいます。
つまり、会社全体の「さくせん」を決めるだけでなく、仲間の経験や強みに合わせて任せ方を変えることも必要です。
経営方針は共有する。しかし、全員に同じマネジメントをする必要はない。
この点も、会社というパーティを動かすうえで大切な視点ではないでしょうか。
経営者の仕事は「全部決めること」から「作戦を決めること」へ
会社が成長するにつれて、経営者の役割も変わっていきます。
創業期は、社長自身が営業し、判断し、実務まで行うことが必要かもしれません。
しかし組織が大きくなれば、経営者がすべてのコマンドを入力するのではなく、会社としての方向性を決め、役割を分け、判断基準を整え、仲間が動ける状態をつくることが重要になります。
言い換えれば、「自分がどう動くか」だけではなく、「組織をどう動かすか」を考える仕事へ変わっていきます。
これは、前回の「戦士だけでは魔王は倒せない!?」で取り上げたパーティ編成の次の段階です。良い仲間を揃えるだけではなく、その仲間が力を発揮できる「さくせん」が必要なのです。
作戦は、一度決めたら終わりではない
経営計画や方針を一度決めると、それを守ること自体が目的になってしまうことがあります。
しかし、経営環境は変化します。売上、利益、資金、人材、市場環境、競合、顧客ニーズ。会社を取り巻く状況が変われば、必要な作戦も変わります。
「去年はガンガンいこうぜだったから、今年もガンガンいこうぜ」ではなく、現在の会社の状態を見て作戦を選ぶ。
そして、作戦を変えたのであれば、その理由を社員へ伝えることも重要です。
「今年は売上拡大より利益率を優先する」「今期は新規投資より既存業務の整備を優先する」と経営者が明確に示せば、現場も判断しやすくなります。
まとめ|今、あなたの会社に必要な「さくせん」は?
ドラゴンクエストでは、相手や状況によって「さくせん」を切り替えます。
会社経営も同じです。
- ・成長を取りにいくなら「ガンガンいこうぜ」
- ・会社の体力を守るなら「いのちだいじに」
- ・緊急時や教育段階では「めいれいさせろ」が有効なこともある
- ・会社が成長したら、判断基準を整え、少しずつ権限を移譲する
- ・状況が変われば、経営方針そのものを見直す
大切なのは、どの作戦が一番優れているかではありません。
今の会社に必要な作戦を経営者が選び、それを仲間へ伝え、それぞれが自分の役割の中で動ける状態をつくることです。
いつまでも「めいれいさせろ」で社長一人がすべてを判断するのでもなく、「自分で考えて」とすべてを現場へ丸投げするのでもない。
経営方針を示し、任せる範囲を決め、必要なときには作戦を切り替える。
会社というパーティを前へ進めるために、今どんな「さくせん」が必要なのか。経営者や管理職が、ときどき立ち止まって考えてみてもよいのではないでしょうか。
※本記事は「ドラゴンクエスト」シリーズを題材に、経営・組織づくり・マネジメントについて考察した株式会社AMMCの経営コラムです。ゲーム作品・商品等の権利は各権利者に帰属します。
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