株式会社AMMC|ドラゴンクエストに学ぶ経営
皆様はドラゴンクエストの世界で職業を選ぶなら、何になりたいでしょうか。剣を極める戦士でしょうか。呪文を操る魔法使いでしょうか。それとも、バトルマスターや賢者のように、複数の職業の特徴を活かす道を選ぶでしょうか。
会社にも、一つの分野を深く追求する人と、複数の分野を横断して物事を考える人がいます。今回はドラクエの職業を手がかりに、スペシャリストとゼネラリストの役割、管理職に求められる視点、そして会社の成長段階によって変わる人材配置を考えてみます。
戦士・武闘家・魔法使い・僧侶は、会社のスペシャリスト
会社は、一つの能力だけでは成り立ちません。顧客を獲得する力、商品やサービスを届ける力、お金を管理する力、人と組織を支える力。それぞれの専門性が組み合わさって、事業が動いています。
※職業と部門の対応は、本コラム独自の例えです。ゲームの公式設定を説明するものではありません。
営業が受注を増やしても、現場の供給能力が追いつかなければ顧客満足は下がります。製造技術が優れていても、販売する仕組みがなければ売上は生まれません。財務・経理や人事・総務も、事業を継続させるうえで欠かせない役割を担っています。
以前のVol.2では「戦士だけでは魔王は倒せない!?」というテーマで、異なる役割を持つ仲間の組み合わせを取り上げました。今回は、その仲間たちの専門性をどう活かし、どうつなぐかという話です。
バトルマスター・賢者・パラディンは、ゼネラリストのような存在?
ドラゴンクエストには、作品によって、複数の職業の経験や特徴を活かす職業が登場します。これを会社に置き換えるなら、異なる専門領域の事情を理解し、部門を横断して考えるゼネラリストに似ています。
例えば「バトルマスター型」なら営業と製造現場の両方の事情を理解する人。「賢者型」なら財務・経理と人事・総務を横断して考える人。「パラディン型」なら部門間の調整や組織全体の安定を支える人、といったイメージです。もちろん、これは経営を考えるための比喩であり、実際の職業性能や転職条件を厳密に対応させたものではありません。
ゲーム上の強さと、会社での優劣は一致しない
ここで一つ、はっきりさせておきたいことがあります。ドラクエでは、バトルマスターや賢者などが強力な職業として描かれる作品もあります。しかし、本コラムはその強さの関係まで会社組織に当てはめるものではありません。
私は、スペシャリストとゼネラリストに上下関係はないと考えています。特定分野を深く追求する人がいるからこそ、高度な判断や品質が生まれます。一方、複数分野を理解してつなぐ人がいるからこそ、部門間の問題を解決できることがあります。
大切なのは「どちらが強いか」ではなく、「どんな役割を担い、どの視点から会社に貢献するか」です。
優秀な戦士が、優秀な管理職になるとは限らない
例えば、営業成績が抜群の社員を営業部長に登用したとします。本人は顧客への提案や交渉が得意でも、部下の育成、案件配分、他部署との調整には別の能力が求められます。個人の営業力が高いことと、組織の成果を引き出すことは、必ずしも同じではありません。
もちろん、スペシャリストが管理職に向かないという意味ではありません。高い専門性を持つ管理職もいますし、管理職にならずに専門性を磨き続けるキャリアもあります。重要なのは「専門性の広さ」と「役職の高さ」を混同しないことです。
会社は、管理職だけを評価するのではなく、専門性で大きな価値を生む人も適切に評価できる仕組みを考える必要があります。
管理職に必要なのは「自部署の正しさ」だけではない
営業部長は「売上目標を達成するため、もっと受注したい」と考える。一方、製造部長は「このままでは納期や品質を守れない」と考える。どちらも、自部署の立場から見れば合理的な主張です。
しかし、営業の都合だけで受注すれば納期遅延や残業の増加を招き、製造の都合だけで受注を抑えれば成長機会を逃すかもしれません。ここで必要になるのが、売上・利益・品質・人員・資金繰りを横断して考える「全体最適」の視点です。

管理職は必ずゼネラリストでなければならない、という話でもありません。ただ、管理職という役割を担う以上、自分の専門領域を越えて、他部署や会社全体への影響を理解する姿勢が必要になります。
スペシャリストとゼネラリストの配置バランスは、会社のステージで変わる
もう一つ重要なのは、両者の「理想的な人数比」は一律ではないということです。創業期、成長期、組織が大きくなった段階では、必要な役割も配置のバランスも変わります。
創業期:少人数で複数の役割を担う
創業期は一人が営業も経理も採用も担当することがあります。幅広く動けるゼネラリスト的な人材が力を発揮しやすい一方、商品開発や技術など、事業の核となる専門性も不可欠です。
成長期:専門分化と横断調整が同時に必要になる
売上や従業員が増えると、営業、現場、経理、人事などの業務量と複雑さが増します。各分野に専任のスペシャリストを配置しつつ、部門間の情報や意思決定をつなぐ役割も必要になります。ここで横断調整が不足すると、部署ごとに仕事は進んでいるのに会社全体では滞る、という状態が起こります。
組織拡大期:専門性の深化と全体最適の両立
さらに規模が大きくなると、高度な専門人材が必要になります。同時に、部門責任者や経営企画などが複数領域を見渡し、経営方針と現場の実行を結びつける役割も重要になります。

※上の表は典型的な傾向を示したもので、業種・事業モデル・外部委託の活用状況によって最適な配置は変わります。ゼネラリストを増やせばよい、あるいは専門職を増やせばよいという単純な話ではありません。
経営者が考えるべきなのは、「今の会社に足りない専門性は何か」「部署をつなぐ役割は誰が担うか」「次の成長段階で、どの機能を強化するか」という問いです。
私自身はゼネラリスト型。だからこそ専門家の力が必要だと思う
私自身は、完全にゼネラリスト型だと考えています。財務・経理を軸に、人事労務、生産管理、業務改善など、さまざまな管理業務に携わってきました。
その経験から感じるのは、経理の問題に見えても、原因は営業の請求ルールや現場の情報管理にあることが少なくない、ということです。一つの部署だけを見ていては、根本的な解決につながらない場合があります。
一方、各分野の高度な知識や技術は、その道を深く追求してきたスペシャリストの力が不可欠です。だから私は、ゼネラリストの方が優れているとは考えていません。異なる専門性を尊重し、つなぐことで会社全体の力を引き出すことが大切だと思っています。
AMMCが管理部門の構築・再構築を支援する際も、財務・経理だけを切り離して考えるのではなく、前後の業務や他部署との関係を含めて仕組みを見直すことを重視しています。
強い会社は、二つのタイプをどう活かすのか
まずは、各部門に必要な専門性を明確にし、その価値を正しく評価すること。次に、部門間の情報をつなぎ、意思決定を調整する役割を決めること。そして管理職には、他部署の業務や財務数値を知る機会をつくり、自部署だけでなく会社全体への影響を考えてもらうことです。
二つの役割は、上下ではなく補完関係です。どちらか一方に偏るのではなく、会社の成長段階や課題に合わせて組み合わせることが、組織づくりのポイントになります。
まとめ|最強の会社は、全員がバトルマスターの会社ではない
ドラクエでは、強力な職業を目指して転職を重ねる楽しさがあります。でも、現実の会社では全員がバトルマスターや賢者になる必要はありません。戦士を極める人がいてもいい。魔法使いとして専門性を磨く人がいてもいい。複数の領域を理解し、仲間をつなぐ人がいてもいい。
大切なのは、スペシャリストとゼネラリストのどちらが上かを決めることではなく、会社のステージに合わせて、それぞれが力を発揮できる組織をつくること。強い会社とは、最強の職業を集めた会社ではなく、異なる強みを持つ仲間が力を発揮できる会社なのではないでしょうか。
AMMCでは、財務・経理を起点に、部門間の業務や役割分担を見直す管理部門構築・再構築支援を行っています。自社の組織や管理体制に課題を感じている場合は、お気軽にご相談ください。
※本記事は「ドラゴンクエスト」シリーズを題材に、経営・組織づくり・マネジメントについて考察した株式会社AMMCの経営コラムです。ゲーム作品・商品等の権利は各権利者に帰属します。
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